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代々木の小さなオフィスビル「REMN YOYOGI」

  • WORKSPACE

2026.07

東京都渋谷区

代々木駅近くの狭小敷地に計画した、地上10階建ての小規模オフィスビルである。敷地面積約89㎡という限られた都市条件の中で、単なる収益建築としてではなく、都市に対して立体的な存在感を持つ建築を目指した。

建物は、明治通りに面するとともに、代々木駅から新宿方面へ向かう主要な歩行者動線にも面している。隣地には低層の飲食店舗が並び、その背後にはNTTドコモ代々木ビルの大きな公開空地と超高層が広がる。周囲に余白をもった小さな建築として都市の中に佇むことが、この敷地の特徴である。その対比の中で、小さな建築ならではの存在感をどのようにつくるかが、この計画の出発点となった。

そのため、隣地境界に面する一面を除く三方をガラスファサードとし、小さな建築でありながら都市へ広がりを感じさせる構成としている。しかし、単純なガラスのカーテンウォールとすると、高さだけが強調されたモノリシックなガラスの塊となり、都市との関係が希薄になりやすい。本計画では、スラブの持ち出しによる水平ラインによってガラス面を分節し、陰影と奥行きを与えることで、細長い建築を人のスケールへ引き寄せ、都市との接点を持った立体的な表情を与えている。

本計画において特徴的なのは、ファサードの横桟の高さを、一般的なオフィスビルのように梁型やスパンドレル位置には合わせず、避難バルコニーや避難階段の手すり高さに統一している点である。通常のオフィスビルでは、構造躯体としての梁位置がそのままファサードの基準線となる。しかし本計画では、構造の論理ではなく、人が寄りかかり、視線を落とし、滞在する高さを基準に横桟を構成した。横桟の高さを手すり高さに揃えることで、ガラス面は上下二層に分節され、さらにその背後に現れる梁型と重なることでファサード全体は三層のリズムとして知覚される。構造をそのまま表現するのではなく、人の身体スケールを基準にガラス面を構成することで、各階に居場所の印象を与えるとともに、コンクリートスラブの薄さやシャープさを際立たせている。

また、前面ファサードには、ガラス寸法に応じた断面の大きなビルサッシを用いている。小規模な建築では、そのフレームは相対的に太く見えるが、本計画ではそれを隠すのではなく、スラブ、サッシ、ガラスを一体として構成することで、ファサードに厚みと立体感を与える要素として読み替えた。ガラス面の背後には構造フレームやブラインド、内部空間が重なり合い、全面ガラスでありながら奥行きを感じさせるファサードとなっている。

この立体性は昼夜を通して異なる表情を見せる。代々木駅側では、ガラス面の背後に柱や梁などの構造フレーム、ブラインド、さらに内部の壁面が重なり合い、視線が断面的に建物内部へと導かれる。ガラスファサードでありながら単なる透明な外皮ではなく、複数の層が重なり合うことで、奥行きのある都市的な表情を形成している。また、ドコモタワーの公開空地に広がる緑をガラス越しに取り込み、都心にありながら低層部にも豊かな緑を享受できる環境をつくり出している。

さらに明治通り側では、前面ガラスファサードの内側へ、屋外避難階段に面する隣地側の壁面をセットバックして巻き込み、その間に各階のエレベーターホールや共用空間を配置した。夜間にはその空間が柔らかく照らされ、ガラスファサードの背後にもう一枚の立面が浮かび上がることで、二重のファサードとして知覚される奥行きを生み出している。二つの正面は、それぞれ異なる方法で建築の奥行きを都市へ表現している。

1-2階には飲食店舗を配置している。1階では、前面道路側に必要となる屋外避難通路を確保するため、エントランスアプローチをセットバックさせた。敷地前面には別所有地が介在しており、歩道から建物へ直接真っ直ぐアクセスすることができないという都市特有の条件があったが、その制約を単なる不利条件として扱うのではなく、街から建築へ緩やかに入り込む余白として読み替えている。セットバックされたアプローチは、都市の喧騒から内部へと切り替わる小さな前庭のような空間となり、飲食店舗の入口に滞留性を与えている。

また、1階アプローチの軒裏には木材を用い、ガラスと金属を主体とした外観の中に、人の身体感覚に近い温かさを挿入した。1階だけでなく、各階のエレベーターホールにも木質の天井を設けることで、小規模な建築でありながら都市の中に居心地のある内部性をつくり出している。硬質な都市空間の中で、構造的なシャープさと素材の温かさを共存させることを試みた。

最上階には、オフィステナントが利用できる屋上テラスを設けている。高密度な都市の谷間にありながら、屋上からは新宿御苑の緑を望むことができ、都市との距離感を切り替える余白となっている。日常的な執務空間の延長として、働く人々が外気や風景に触れられる共有の居場所をつくり出している。

高層ビル群に囲まれた千駄ヶ谷・代々木エリアにおいて、本計画は巨大な都市スケールに対抗するのではなく、小さな建築だからこそ可能な繊細な操作によって都市との関係性を構築している。ガラスファサード、水平ライン、共用空間、素材、そして法規上求められる避難空間など、都市建築に求められる多様な要素を一つの建築的秩序へ丁寧に統合することで、小規模なオフィスビルでありながら都市に豊かな表情と奥行きを与えている。

  • 用途:飲食店・事務所
  • 所在地:東京都渋谷区千駄ヶ谷五丁目
  • 敷地面積:89.31㎡
  • 建築面積:70.55㎡
  • 延べ床面積:566.86㎡
  • 容積率算定延べ床面積:508.03㎡
  • 構造:鉄骨造(一部地下RC造)
  • 階数:地上10階
  • 最高高さ:33.05m
  • 用途地域:商業地域
  • 防火地域:防火地域
  • 建築主:TRIAD
  • 設計監理:キー・オペレーション一級建築士事務所
  • 構造設計:オーノJAPAN
  • 設備設計:Pros.環境計画
  • 施工:真心建設
  • 写真:トロロスタジオ 中村マユ

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