中目黒の集合住宅 「Aulii Nakameguro」

目黒区中目黒の住宅地に建つ、集合住宅の建替プロジェクトである。かつて隣接して建てられた二棟のうち一方を更新したもので、敷地は北側を前面道路、南側を学校の校庭に面し、都心の中で両側がひらけた希少な条件を持つ。面積は限られているが、敷地奥行きは深くなく、間口方向にゆとりがある。都市に対してどのように開き、内部にどのような生活の単位を積層するかが、計画の中心に置かれた。

当初は階段室型や片廊下型で20㎡台の住戸を中心とした集合住宅の典型的な配置が検討されたが、住戸の奥行きが深くなり、前後の開口条件や通風、住環境の質においてバランスを欠くことが見えてきた。そのため、道路側だけでなく、背面の校庭側にも開けている環境を活かして、道路側と学校側の両面に住戸を展開するために、建物中央に中廊下を挿入した構成とした、通常中廊下型は、閉塞感のある共用部につながりやすいが、本計画では廊下の一部を学校側に開放し、空地と連続させることで、外部との応答を保ったまま住戸を配する「開かれた中廊下型」としている。

また、住戸の広さに関しても、近年の賃貸市場の傾向—在宅時間の増加・二人暮らし世帯の増加など—を踏まえ、30㎡以上を基本とする構成に移行した。各住戸は通風や採光が良い角部屋が多数を占めるように、奥行きが浅く間口の広い平面としている。30㎡台から60㎡台の住戸をバランスよく分布させ、単身、DINKS、ファミリーといった多様な世帯構成に応えている。これにより利回りの安定が期待されるだけでなく、住戸の質や入居者の定着率の向上にも寄与する計画となっている。

大きめの住戸には納戸やDENが挿入されており、テレワークや趣味、休息といった生活の複数の位相を受け止める余白となるよう計画されている。セットバックした上層階にはルーフバルコニーを設け、ファミリー世帯用の大きめの住戸と組み合わせている。

在宅時間が長くなっている現在のライフスタイルに対応し、同居人どうしの距離感に配慮した個室中心のプランとしており、壁式構造のスパンはこの個室の幅と一致させるようにしている。住戸内の動線はコンパクトだが閉塞せず、機能的な収納や出入り口の配置によって場の切り替えが柔らかく生まれるよう設計されている。設備機器の配置も正面ファサードに現れないよう配慮されており、室外機の多くは屋上に集約してバルコニーをなるべく避け、建物の外観に生活感を極力出さない構成とした。洗濯は室内干しが前提であり単身〜DINKS層のライフスタイルに即した仕様としている。

ファサードは開口寸法を統一し、住戸ごとの構成が読み取れない開口配置としている。内部からは十分な開放性が感じられるが、外部に対しては静かな表情を保っている。前面道路側には植栽帯を設けており、都市のスケールに対して小さなグリーンの緩衝を設けている。仕上げは杉板型枠によるコンクリート打放しで、表層の凹凸と柔らかな陰影が住宅地のスケールに呼応している。

共用部の天井にはレッドシダーを用い、「開かれた中廊下型」の窓からの自然光と相まって建物内部にあたたかな雰囲気を与えている。学校側に確保した窓先空地は、避難経路としての役割を果たしながらも、建物と隣地のあいだにゆるやかな余白を生み出し、採光・通風条件の改善にも寄与している。

1階部分には通りに面した住戸が設けられ、SOHOや軽い商いの場としても展開可能なプランとなっている。用途の設定を過度に固定せず、入居者による解釈の余地を残すことで、都市に対して自然な応答が生まれるよう意図している。また、今回の建て替えにあたり、近接する既存建物との距離感にも配慮し、1階部分にピロティを挿入している。この空間は単なる離隔ではなく、都市の中に呼吸の余白をつくる構成要素として扱われており、通行や視線の抜け、偶発的な交流の場にもなりうることで、住人同士だけでなく、周辺の住民とも多層的な関係を構築することを目指した。