東武鉄道スカイツリーライン越谷駅高架下に位置する駅商業施設「EQUiA越谷」第Ⅱ期の東側エリアの計画。
駅高架下の商業空間は、機能的である一方、無機的になりやすく、テナントは個別のサインによってのみ存在を主張しがちである。その結果、空間全体としてのまとまりを欠き、駅を利用する人々も目的のある店舗以外には足を向けにくい状況が生まれていた。
第Ⅱ期では、第Ⅰ期で取り組んだ設計の考え方を引き継ぎ、昔ながらの街道沿いの宿場町に見られる「軒先」のあり方を、引き続き空間構成の手がかりとしている。宿場町では、通過する旅人を迎え入れるために軒を出し、街としての連続性と人との距離感をつくってきた。本計画では、この軒の操作を現代の駅空間に重ね合わせている。
第Ⅱ期の特徴は、内部通路をもたない構成にある。駅の自由通路から離れるにつれて人のトラフィックは自然と減少し、特に端部の店舗には人が行き届きにくいという課題があった。そこで軒を連続して伸ばすことで、駅から奥へと人の動線と視線を引き延ばす構成としている。
一方で、第Ⅱ期には駅内部の通路に直接面する部分も存在する。このエリアでは外部に軒を設けることができないため、店舗のファサードをガラス張りとし、駅通路から店舗の気配が感じられる構成とした。閉じた壁面をつくらず、視線が抜けることで、通過動線の中に商業の存在をにじませている。
また、駅内部に面する壁面には木材を用い、駅の外側に連なる軒先空間と素材的な連続性を与えている。軒が途切れる場所においても、木質の表情を壁面へと置き換えることで、場所の切り替わりをなだらかにし、外部から内部へと続く一体の「通り」として認識されることを意図している。
軒および壁面に用いられた木質仕上げは、無機的になりがちな高架下や駅内部空間にぬくもりを与え、「通過する場所」から「立ち寄ってもよい場所」へと空間の性格を緩やかに転換している。
EQUiA越谷 第Ⅱ期は、宿場町の軒先が担ってきた「迎え入れる装置」としての役割を、駅高架下および駅内部という異なる条件の中で再解釈した試みである。軒と壁面という異なる手法を用いながら、素材と視線の操作によって連続性をつくり出し、人と空間の関係を編み直している。
- 敷地:埼玉県越谷市
- 用途:商業施設(飲食店舗等)
- 竣工:2025.10
- 延床面積:605㎡
- 環境デザイン:株式会社キー・オペレーション
- 設計:株式会社オー・エヌ・オー 大野設計
- 施工:東武谷内田建設株式会社


