PROJECTS

麻布垂光の家

  • RESIDENTIAL

2025.08

東京都港区

かつて一体だった南麻布の敷地を相続で三分割し、親族がそれぞれの住宅を建てたプロジェクトの中央に位置する住宅である。三棟のうち手前の住宅は異なる設計者によって計画されているが、奥の住宅は以前我々が設計した「麻布霰窓の家」である。中央に建つ「麻布垂光の家」は、建築的にも構成的にも両隣と対話するように設計されている。

光がふりそそぐ吹き抜け
高度地区の斜線制限を受けるため、建物は自然と斜め屋根の断面をもつ形となったが、ここではその制約を積極的に空間へと転化している。リビングが3階にあり、斜線にかかる部分をテラスとした「霰窓の家」と異なり、本計画ではリビングを2階に配置し、3階の一部を吹き抜けとすることで、斜め天井が光を導く反射板となっている。最上部に設けたハイサイドライトからの光は、この天井に反射・拡散されて空間全体に降り注ぎ、日中の室内をやさしく照らす。光が床や壁、木の天井に描く陰影は、刻々と変化しながら空間に時間の豊かさを与えている。
この高窓は開閉可能で、室内に溜まった暖気を屋外へと逃す自然通気の仕組みにもなっている。下階の窓を開けることで上下階に温度差が生まれ、風のない空気の流れが生まれるパッシブ換気の工夫として機能している。

閉じながら開く窓
幅730mm×高さ1450mmの窓は、外からは内部が見えにくいが、内部からは外が良く見える。窓に対して感じる開放感は窓との距離で大きく左右される。室内にいる場合、外部にいる時と比べると窓への距離が近いため、窓の幅や高さがある程度確保されていれば内部から十分に開放的に感じられる。一方で外部から見ると、余程建物に近づかない限り、窓の幅と高さがある程度に抑えられていれば、内部が見えすぎない。また窓が均質に連続しているため、内部から外を見ると、見えない部分も意識の中で補完されて、壁の向こうの景色全体を意識することができる。前面道路に面した2階リビングの4つの窓からは柔らかな光が差し込むとともに、正面の住宅の竹林が借景として室内に展開されている。通常であれば外部との明暗のコントラストによって室内が相対的に暗く感じられるところ、上部のハイサイドライトからも光が注ぐことで、室内全体が均質に明るく、視線が外へと自然に伸びていくような開放感が生まれている。

家族を繋ぐ吹き抜けと時の移ろい
内部においては、2階に据えられたリビング・ダイニングが空間の中心であり、3階の寝室とは吹き抜けを介してゆるやかにつながっている。1階には玄関と応接室、水回りが機能的に配置され、公私の動線が整理された構成となっている。3階の廊下は吹き抜けを囲むように配され、上下階で家族の気配が交差する構成となっており、階段や吹き抜けを通じて家族の存在がどこかで感じられる縦のつながりが生まれている。
内装にはナラ材の突板による家具や建具、木製サッシ、2階リビングの小幅羽目板天井、キッチン背面の深緑色のタイルなど、使い込むほどに味わいが増す素材が使われている。これらは単に視覚的な要素にとどまらず、手触りや音の吸収、経年変化を含めた身体的な心地よさを空間にもたらしている。自然光がそれらの素材に陰影を落とし、時間の移ろいを家族で味わい、愛着をもてる空間をつくり出している。

親族の三棟を調和させる
外観では窓の配列を奥の「霰窓の家」と連続させ、手前の住宅で用いられた暖色系の外壁色と調和する色味を選定することで、この住宅はその両者の特徴を引き継ぎながら、三棟の関係性において中庸的な立ち位置を担い、調和を作っている。
玄関まわりでは、こげ茶色の木毛セメント板が用いられ、暖色の外壁と素材感における対比をつくり出している。温かみのある色合いが、都市との接点に落ち着きと親しみを与えている。道路からのアプローチには植栽が添えられ、敷地境界に柔らかな緑の余白を設けていることも、三棟の住宅に共通している。2階のリビングから見える隣地の竹林のように、個々の住宅の緑が、お互いの借景となればと考えた。

サステナブルで快適な空間
環境性能にも高い配慮がなされており、コンクリートに外断熱構法を採用することで Ua 値0.44 W /㎡Kという高い断熱性能を実現している 。さらにコンクリートの蓄熱を活かし、快適な室内環境を長時間保てるように計画されている。空調には全空気式の床ふく射冷暖房システムを採用した。床下に設けたダクトから静かに空気を送ることで、風を伴わない穏やかな温熱環境を実現している。このシステムで吹き抜けを含む上下階で温度差のない快適な空間が維持され生活の質を高めている。

協調する街並みをつくる
この住宅は、相続後の親族の関係性のなかで、街に対する協調性と、生活に対する個別性の両立を試みるため、両隣と響き合うファサードと、独自の断面構成を併せ持つことで、親族の集合的な街並みに寄り添いながらも、ひとつの住宅として自立した形を持つことができた。

  • 敷地:東京都港区
  • 用途:戸建住宅
  • 竣工:2025.08
  • 構造設計:構造設計工房デルタ
  • 設備設計:コモド設備計画
  • 施工:株式会社TH-1
  • 写真:トロロスタジオ 中村マユ
  • 敷地面積:100.75㎡
  • 建築面積:65.32㎡
  • 延床面積:189.34㎡

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