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信濃町の集合住宅「ZOOM信濃町」

  • RESIDENTIAL

2025.07

東京都新宿区

外苑東通りに面した左門町の交差点に建つ集合住宅。信濃町駅と四谷三丁目駅の中間に位置するこの敷地は、東側が商業地域、背後の西側が第一種中高層住居専用地域という、異なる用途地域の境界に位置している。外苑東通りは神宮外苑から四谷にかけて連続する都市軸であり、沿道には同程度の高さの建物が向かい合って並ぶ環境である。通りを挟んで正対する街並みとの視線の衝突、プライバシーの確保、東向きの強い日射への対応が同時に求められる、集合住宅ファサードにとって特に条件の厳しい立地であった。

東側は大通りのスケールに呼応する13層の高層棟とし、西側へ向けて段階的に高さを抑えることで、外苑東通りと背後の住宅地という二つの都市スケールを一つの建築で接続した。西側は周辺の住環境に配慮した4層の低層棟とし、高層棟と構造を切り離すことでフレームを整理している。構造は耐力壁を持たない純ラーメンRC造で、キャンティレバーを駆使してこの段階的な高さの変化に対応し、各階で平面形状が異なる26タイプ以上の多様な住戸79戸を13層に積層させている。

集合住宅のファサードは、バルコニーと設備機器の存在によって都市景観を雑然とさせる要因となっている。本計画ではまず、バルコニーを設備や生活行為が集中する内側の層と位置づけ、室外機や物干しをアルミパネル手摺で覆い、給湯器・排気口も濃いグレーの色でまとめることで、要素の分散による雑多さを抑えた。さらにファサード全体を住宅の断片の集合としてではなく、ひとつの面として捉え直すために、外側に設けたのが、線材に密度を持たせて束ねたバンドルルーバーによる外殻である。一般的な線材ルーバーよりも遮蔽性を高め、面材ほど閉じないこの形式は、プライバシー確保と開放性の両立を可能にしている。東向きのファサードにおいては、夏季の直射を遮りながら冬季は拡散光を室内に導く環境調整装置としても機能している。ルーバーの取付部材には外壁と同系統の焼付塗装を施し、座屈・音鳴り対策の中間支持材を手摺天端と位置を揃えることで視覚的影響を最小限に抑えた。各階スラブの端部はシルバー塗装を施しルーバーとの一体感を高めている。足元にも同じボキャブラリーで縦束を設け、雨樋をカモフラージュしながら立面を上下に貫くリズムを形成し、街路への佇まいを整えている。

大通りに面するエントランスホールは、石・木・木毛セメント板の落ち着いた素材で構成され、外部の喧騒とは対照的な静けさを生み出している。内部廊下の高層棟では、照明と素材の質感によって奥行きを感じさせる空間とし、都市の中心にありながら内部へ進むほど静けさが深まる構成とした。住戸内部は、バンドルルーバーが通りを挟んで正対するマンションからの視線を調整しながら、朝の直射を拡散させて白壁に陰影を落とし、昼には影が床をゆっくり移ろい、夕刻には逆光を受けた反射光が室内に微かな温度変化をもたらす。建築の外殻が内部空間と一体となり、都市の中に時間の深さと光の質を持つ住まいを生み出している。

本計画は、法的制約や構造・設備・経済性といった現実的条件の上に、繊細なレイヤーを重ね合わせることで成立している。バンドルルーバーが内部の合理性を包み込み、都市に対して秩序ある表情を与える。日中は空の色を映し込みながら繊細な陰影を生み、夜には室内の光がその隙間から滲み出る。外から内へ、素材から光へ、機能から情緒へと連続する一連のデザイン操作によって、高密度な都市の中にありながら、住まいが静けさと時間の豊かさを感じさせる場となっている。

  • 敷地:東京都新宿区
  • 用途:共同住宅
  • 竣工:2025.07
  • 事業主:株式会社 トーシンパートナーズ
  • デザイン監修:株式会社キー・オペレーション
  • 設計施工:藤木工務店
  • 写真:矢野紀行
  • 敷地面積:609.62 ㎡
  • 建築面積:446.51 ㎡
  • 延床面積:3759.37 ㎡

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